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滞在記 2024.04.20 Update

朝を制し、牛と踊る【谷川牧場体験記】

はじめまして。
大阪府出身の花です。気づいたら23歳になっていました、元気です。
大学を卒業後、大学院別科に進学し、現在学生最後の春休みを浦幌で過ごしております。
大阪育ちの私にとって3月なんて感覚的には春やのに、浦幌の3月はガスストーブの匂いが心地いいくらいに冬です。大きな窓の外で佇む雪が眩しくてええ感じ。

浦幌へ向かう雲の上より。ナスカの地上絵みたい。

食は生きることの基盤であり、私たちの生活を豊かにしてくれると私は思っています。だから、食を支える農業や酪農、漁業などの第一次産業は大事にされるべきで、社会人になる前に「第一次産業に最前線で関わる方の話を聞いたり、実際に体験したい!」「一次産業に1ヶ月どっぷり浸かりたい!」という思いで浦幌に来ました。

雪掻きではしゃぐ私

今回滞在させていただいているハハハホステルのスタッフであり、つつうらうら事務局の風子さんに提案してもらい、谷川牧場さんで1泊2日のつつうらうらツアーに参加しました。

私は動物を飼っていたこともなければ、牧場に行くこともはじめてで、牧場なんてハイジみたいやなぁ、やっぱり牧場って臭いんかなぁ、とふわふわ思っておりました。

1日目

薄ら雲が霞む昼下がり、ハハハホステルを出て、真っ白な雪のカーペット道を30分ほど走り、谷川牧場に到着!

こんな道をずんずん進む

牧場の広さに驚きました。「きゃ〜赤毛のアンの世界感!ここはグリーンゲイブルズかしら?^^」な気分でうきうき。谷川牧場では、お父さん、お母さん、息子のかずきさんが働いています。元気なお母さんとちょっぴりシャイなお父さんとかずきさん。纏う空気が優しくてほっこりするご家族です。

基本的に、仕事はかずきさんが教えて下さります。かずきさんは、とても優しく丁寧でどこか少年らしさのある素敵な方です!私は序盤から質問責めしていました(笑) 

ギルバートはどこからでてくるのかしら?(※赤毛のアン参照)

15:00 子牛の世話

着いて5分もしないうちに仕事が始まりました。

まずは子牛の哺乳。かわええなぁと見惚れていると、ミルクをあげる角度がまずく、子牛を困らせる事態に。簡単そうにやるかずきさんを見ながら、看護実習で赤ちゃんにミルクをあげた日を思い出し、なんだか気合が入ります。

哺乳を終えると、他の子牛に餌やり、水やりをします。
餌の成分が気になる私、「これなんですか?」
「とうもろこしだよ~。」とのこと。でも主食は草なので草もいっぱいあげました。

いっぱい飲んで大きくなるんやで〜

15:30 搾乳されないデカ牛の世話

妊娠前や妊娠中の牛の世話を行いました。人間同様、出産していない牛から乳は出ません。
数分前まで子牛をみていた私にとって、大人の牛はあまりにもでかい、ほぼ赤木先輩(※スラムダンク参照)。元い、デカ牛に餌をやります。
牛の柵ギリギリに餌をばら撒くのですが、スピーディーかつ均等に配らなければいけません。これがかなり難しい。ちんたらしてると牛が柵越しに迫って来ます、かなり積極的なご様子、迫られ舐められ人生最大のモテ期(?)、一番難しい作業でした。

この柵ギリギリに餌撒きます、むずぅ〜〜

餌をあげたら今度はサイレージ(草のロール)をあげます。
餌は前菜、サイレージはメインディッシュです。
ロール状のサイレージを分解して、牛の前に置くとむしゃむしゃ食べてて可愛かった。

今食べてるねん、撮るな!って言ってる

16:00 搾乳準備

牛舎にいる牛たちを搾乳待機場へと移動させます。

動き始めると牛は急にうんちやおしっこをしだしました。
牛は排泄場所を選ばない模様。
したくなった時にするし、なんなら歩きながらうんちします。だから普通に私の身体や顔面に、うんちが飛んできます。

でもうんちが出るということは健康な証!かまへんかまへんいっぱいだしーという気持ちで移動させました。
そして牛のうんちからは湯気が出る。うんちから湯気ってほんまに出るんやと私はなんだか面白くなっていました。

そんな中、絶対動きたくない牛VSかずきさんの図を発見。搾乳されたくないのか、ニート気質の牛なのか、かずきさんが起こそうとしますがなかなか動かず。牛はおっきくて重いので人間のように無理やり動かすなんてことはできなさそうでした。

地面の茶色い部分、全部うんちです

牛たちを移動させた後は、牛舎の掃除。

牛のうんちを掃除したり、ベッドを作ります。
うんちは臭くて水っぽかったりネバネバしてたり、様々でした。
でも草と水ととうもろこしの餌をたべてるので人間より匂いや質がましに思います。 

16:20 搾乳開始

谷川牧場では140頭の牛を搾乳しています。私はてっきり手で乳を絞ると思っていました。まあそんなことをしていると何時間あっても足りないわけで、ミルカーという搾乳機を使用して20頭ずつ搾乳をします。

ミルカーをつける前にお乳を拭く作業があり、私はこれが好きでした。おっぱいを拭く時に蹴られたり、うんちを飛ばされたりもしました。でも搾乳したら楽なるからちょっと失礼するで〜、とか思いながら拭いてたら愛着が湧いて愛おしく感じました。なぜか涙が出そうでした。

牛のおっぱいは人のおっぱいより硬くて、でも牛によって大きさも硬さも色も全然違うわけで、それがなんかすごく良かった。10頭ずつ並んで搾乳されている牛たちはみんなママ友で、ママ友会にお邪魔している気分です。牛にも偉いとか気弱いとかあるんやろうなぁと勝手に妄想してました。

おっきいおしり、プリティー!

お母さんとかずきさんは、搾乳する牛を一頭ずつこの子は大人しいからとか言うてはって140頭のママさん牛たちを、一頭ずつ覚えてました。これこそ愛!丁寧な作業から牛への愛の片鱗を感じてはいましたが、この時にどーーーんと愛の塊を感じて、私も優しい気持ちと愛に満たされました。

18:30 搾乳場の掃除

搾乳が終わったら、搾乳場の掃除をします。
搾乳後、牛舎へ戻ろうと歩き出すのと同時に排泄するので、搾乳場はうんちまみれ。雪掻き機と大きいホースと手を使って綺麗にします。最後にミルカーを洗えば終わり!

作業が終わったのは19:00頃。
順番にシャワーを浴び20:00、夜ご飯は焼肉に連れて行っていただきました。

さっきまで牛の世話をしてたのに、直後に焼肉を貪り食物連鎖の真っ只中にいる自分につくづく自然の一体性を感じました。味はもうめっちゃ美味しかったです。谷川さん一家は食べる量がめっちゃ多い、そりゃあんだけ動いてたら食べるわなと納得です。

タンとサガリが美味しかった

自宅に戻り22:00に就寝。
暖房のついた温かい部屋で布団を敷き、寝ます。布団出して好きなようにして〜と一階から話す、力の抜けたお母さんのありがたい対応がとても心地よかったです。

2日目

4:00 起床

外はまだ真っ暗、静かな牧場、今日はどんな天気になるのかな。

実は緊張して1時から起きてた

4:20 お仕事開始

昨日したのと同じ作業をします。
ただ朝は搾乳→掃除→子牛の世話といった順番です。

7:45 お仕事終了

仕事が終わり外へ出ると暗かった空が明るく輝き、牧場には燦々と陽が差していました。疲れましたが疲れが爽やかです。

あれ気づいたらこんなに明るくなってるやないの!と嬉しくなる

8:00 朝食

お母さんが朝食を用意してくださりました。労働後のご飯はほんまに美味しい。
そして搾りたてのホットミルクを飲ませて頂きました。
私はあまり牛乳が得意ではなかったのですが、これは格が違う、美味しすぎて牛乳の概念が変わりました、スイーツです、甘すぎて飲むスイーツだと思いました。

コンビニスイーツの横に置いたらええのに

9:00 プログラム終了

ここに来なければわからなかったことがたくさんありました。牧場の匂いや広さ、牛の大きさ、牛の温かさ、牛のおっぱいの感触、五感を通して感じることの心地よさ。酪農は想像以上に体力のいる仕事で、プログラム終了時には、いますぐ温泉に駆け込みたいと思うほどでした。しかし、一つ一つの作業が誰かの食卓に繋がっていると思えばどこか嬉しく、同時に牛乳もチーズもなんとなくそこにあるのでなく、毎日休まず働いてくれている酪農家さんのおかげである、ありがたいものだと心より感じました。

それは牛だけでなく、他のどの野菜や家具だって、私が普段何気なくお世話になっている諸々はきっと全部そうなんやと思います。体験を通して思い出して感謝できるんじゃなくて、体験しなくても普段から何事にも感謝できる人でありたいです。感謝神経育てていきたい。

私を舐めたがーる牛

プログラム中の谷川家の会話で、「今日の牛は◯円やった」とふわっとおっしゃっていました。小学生のお小遣い⁉︎︎︎乳雄子牛の価格が暴落しているとは聞いていましたが、それがこんなに現実的で当たり前に、酪農家の日常に溶け込んでいることに驚きました。おかしいのではないか?こんなに大変な作業な上、社会情勢による餌や肥料代の高騰を考えると、あまりにも割に合わず、赤字に追い込まれるのが仕方がない現状に沸々と怒りを感じました。もっと酪農や経済のことを勉強してみたいです。

私は食育に興味があり、来月より養護教諭として働きます。学校給食は牛乳の出口となる重要な消費過程です。給食牛乳の消費者である子ども達にきちんと生産者の仕事や現状を知ってもらえるような働きかけをしていきたいと改めて思いました。また、子どもや保護者、地域の人と一緒に、このような現状をきちんと考えて、行動できる養護教諭になりたいです。

谷川牧場の皆さん、つつうらうらの皆さん、貴重な機会を下さり本当にありがとうございました。

雪道で彷徨い警察に助けてもろた後、昆布刈石展望台でヨガを決める私

この記事を書いた人

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大阪府出身。大学卒業後、大学院別科に進学し、学生最後の一ヶ月を最高なものにしたい!と北海道での滞在先を探す中で、縁もゆかりも無かった浦幌町に飛びこむ。人生のモットーは愛とユーモア。

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