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働く人 2022.08.22 Update

ひととなりがみえる豊かさを知った、浦幌町での暮らし。ー一般社団法人十勝うらほろ樂舎 古賀詠風ー

こんにちは!京都の大学に通っている、やまもとこまきです。2022年2月から1ヶ月、浦幌町に滞在していました。浦幌町滞在を終えてから、早いもので4ヶ月が経ち、京都は酷暑の夏を迎えています。京都は盆地のため夏は熱気がこもって本当につらく、浦幌町の冷えた冬の空気が恋しくなっています。冬の浦幌町の気候が合っていたのか、滞在先のハハハホステルの薪ストーブが心地よかったのか、極寒と脅されていた真冬の浦幌町が私は結構好きだったんだなと思い出に更けながら文章を書いています。

さて、「つつうらうら」をご覧になっている、特に私と同年代の方のなかには「就活」の2文字にプレッシャーを感じている方も少なくないのではないでしょうか。かくいう私もずっと、仕事とは、与えられた仕事を事務的にこなしていく味気ないイメージを拭いきれずにいました。そんなとき知ったのは、浦幌町で活き活きとはたらいている人たちの存在。この町で生きる人たちにとって、浦幌町ってどんな町なんだろう。ここではたらく人はどんなことを考えながら仕事をしているのだろう。そんなことを知りたくて、今回もお話を伺いました。

浦幌町は、”顔がみえる”関係の豊かさを実感できる町。

そう話してくれたのは、2018年に浦幌町へ移住した古賀詠風さん。彼は北海道の北東部にある遠軽町出身。札幌にある大学を卒業後、新卒で地域おこし協力隊に就任し、浦幌町に移住しました。顔がみえる関係とは、具体的にどういうことなのでしょうか。

〈プロフィール〉
1996年、北海道遠軽町生まれ。北海道大学教育学部で地方での教育や社会教育を学びながら、「カタリバ」で高校生への授業運営と大学生への研修を担当。在学中に浦幌の次世代を想う姿勢に惚れ、大学卒業後、2019年より北海道十勝の浦幌町地域おこし協力隊うらほろスタイル担当として移住。町の中高生が行う地域を舞台とした活動団体「浦幌部」のサポートや社会教育の場づくりなどを行う。3年の任期を終え、事業を連携して行っていた「一般社団法人十勝うらほろ樂舎」に今年4月より入社。

詠風:例えば、目の前のジャガイモひとつをとっても、産地だけじゃなく、浦幌町のあの農家さんが育てたジャガイモだなって思いながら食べることができるんですよ。それに農業体験をさせてもらったことを思いだし畑の情景を思い浮かべて食べると、味わいも変わってくるという感覚ですね。

それに育てた農家さんの背景というか、ひととなりを知っているから、食べるものにお金を使うっていう行為一つとってもその意味がすごく変わってくるんです。シャガイモを買ったこのお金はあの農家さんの元にいく、あの人のことだからきっと子供たちが楽しめる活動にも使ってくれるんだろうなって、そこまで想像できるんですよね。

ーー生産者の顔が見えるということは今どき珍しいものではないけれど、さらにもう一歩深く踏み込んだ「ひととなり」を知っていることが豊かさにつながるということなんですね。そのようなつながりはどうやって育まれていくんでしょうか?

詠風:浦幌町で暮らしていると自然とそういう繋がりは増えてきます。でもさらに浦幌町がいいなと思っているところは、この町では「何かやろう」としている人がいたらサポートしてくれたり、一緒に楽しみながら支えてくれる人がたくさんいることです。以前、中学生が企画して1日カフェを出店したんですが、嬉しいことにすぐに300食が完売してしまったんです。みんなが、この子たちがカフェをするらしいぞ!っておしかけてくれたんです。中学生の喜んでる姿をみて僕も嬉しくなりました。あとは、2022年6月に初めて開催した「うらほろマラソン」。僕は運営に携わっていたんですが、ボランティアスタッフが200人弱も集まってくれたんです。4500人くらいの町で、それくらいたくさんの方がスタッフとして参加してくれるってすごいことだと思うんです。

ーーすごいですね。なぜそんなに人が集まってくれるんでしょう?

詠風:誰かの生き方やチャレンジを応援する文化がこの町全体に根付いているなと感じてます。頑張ってるならちょっと手を貸そうかって。そういう雰囲気がすごくある。集まってくれたボランティアスタッフは、年代層も幅広い町の方が集まってきてくれたりして、大人が子供にも背中で見せようって気概もあるんですよね。食べ物もイベントも、単に受け身になって消費するだけで終わるんじゃなくて、「今ないものはみんなでつくっていこう」というふうに過程を共有できるのがすごく楽しいし、それを町の人が共通して理解している。いっしょに体を動かして、いっしょにつくっていける。そんな機会がたくさんあるおかげで、人とのつながりもおのずとできていく町だなと思います。

貰ったサポートを、次世代に繋いでいくために。

子どもたちや若者のチャレンジを応援して、一緒に楽しみながらつくっていく浦幌の文化が、顔がみえる関係や「ひととなり」を知る豊かさをつくっている。そんな潮流の一端をになっているのが、町で15年続く「うらほろスタイル」という取り組みだ。うらほろスタイルでは、町内の小中学校と地域が連携し、町内の子どもたちが地域に対する愛着や誇りを育めるような取り組みを行っているという。

ーー大学では教育学部に在籍していた古賀さんは、地域おこし協力隊としてこの取り組みに携わっていましたが、昨年度任期を満了し、この春からは一般社団法人十勝うらほろ樂舎で働いていると聞きました。

詠風:前職では、子どもたちが浦幌町で楽しく暮らせる環境を作れるように、一方的に何かを教えるんじゃなく、それぞれの子どもたちの興味関心に寄り添ってコーディーネートをする仕事をしていました。今勤務しているうらほろ樂舎には、協力隊だったときから担当者として関わっていました。だから4月から心機一転という感じはあまりなくて。とはいえ変わった部分で言うと、教育の領域だけではなく、もっとまちづくり寄りのことにも関わることが増えましたね。

ーー今後、古賀さんはどういう仕事をしたいなとかありますか?

詠風:浦幌町に住んで僕も町の方々にたくさんのことを支えてもらいました。だからこそ自分もやんなきゃな、返していかなきゃなと思うんです。自分も行動しつつ、誰かをサポートし続けられる存在でありたいと思っています。これからも、小中学生に限らず、高校生も若者も、もっとハッピーになれる環境を作っていきたいなと思っています。僕自身としても、これからもスタンスは変わらず、楽しく暮らし合う関係性を作っていける働き方をしたいです。

ーーサポートし、サポートされる連鎖をとめないよう、次の世代に手渡していくということですかね?

詠風:そうですね。そして、浦幌町にフラッと訪れた人にもそのサポートの手を差し伸べたいと勝手ながら思っています。このサイト「つつうらうら」をいいなあと思ってるんですが。このサイトが担う役割を雇用だけに限らなかったところです。働くだけじゃなく暮らすことも含めて浦幌町全般のことを紹介していて、1日就業体験ができるとか、浦幌町での多様な滞在の仕方を提供している。ちょっと浦幌町に来る機会が合ったりする場合も少しでも浦幌町を体感してもらえる環境を整備しやすくなったなと思ってるんです。だから、このつつうらうらの仕組みを、訪れる皆さんにも町の皆さんにも積極的に使って欲しいなと思っています。さっきも話した、顔が見える関係性の豊かさも含めて、この町で暮らすことを楽しんでもらえたら嬉しいです。そしてそこに僕がサポート役としてお役に立てたらなと思っています。皆さんぜひ気軽に浦幌町に来てください。そして、古賀をいつでも呼んでいただければと思います。

古賀さんの話を聞いていて、改めて浦幌町の滞在期間を思い出していました。浦幌町は「あそこに行きたい」よりも「あの人に会いたい」からはじまる場所。一緒に浦幌町滞在をしていた友人とそんな話をしたことも。古賀さんへの取材を経て、その理由が少しわかったような気がします。 

自分たちが、日々を楽しく豊かだと思える関係を築いていくために、町のこれからのあり方を自らの手でつくっていく、そしてサポートする。はたらくことを通して自身の生きたい日々を掴み取ろうとする姿そのものが、町の魅力になっているように思いました。

この記事を書いた人

この記事を書いた人山本 小蒔

山本 小蒔

三重県出身、京都在住の21歳。大学では、アートをはじめとするモノやコトを媒介にしたコミュニケーションの促進について学んでいます。2022年2月から約ひと月のあいだ浦幌町に滞在していました。浦幌町のイチオシスポットは町立博物館!毛の端々まで間近で観察できる、生き物たちの剥製が圧巻です。

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