【私が出会った浦幌町民(4)】新しいことを模索し続ける、神主の挑戦〜浦幌神社 背古宮司〜
生まれた場所や土地柄にしばられず、「この場所にずっといたい」と心から思えている人たちが、私はうらやましい。そんな人たちに対するうらやましいという思いは、実は多くの人たちが抱えているものなんじゃないだろうか。生まれ育った町や、住み慣れた町で自分がやりたいと思ったことができなかった、共感してくれる人がいなかった。そうやって夢を諦め、都会に向かった人もたくさんいると思う。そんな私は、「この場所にずっといたい」という思いを素直に表してくれた9人の町民たちに、ここ、浦幌町で出会った。
こんにちは、須藤か志こです。前回の記事では、浦幌町で酪農牧場を営んでいる、髙木牧場 髙木翔太さんに会いに行った。牛との向き合い方、自分との向き合い方に衝撃を受けたわたしだが、少し休憩も挟みつつ、バイクのライダーさんに非常に人気のあるという「浦幌神社」に向かった。
浦幌の市街地のちょっと外れ。少し小高い場所にある浦幌神社。ここからの浦幌の眺めが結構好きかもしれない。
お参りを済ませる前に、一風変わったおみくじを発見。この下からじゃがいもを掘り当てるらしい。
じゃがいもおみくじを引くことができた。
結果はさておき、今日は宮司に会えることになっているので、早速伺います。
浦幌神社は神社らしくないというか従来の神社の姿にとらわれず、新しいことに様々チャレンジしているらしい。そんな話をたくさん聞いて見たいと思う。
浦幌神社はバイク乗りが集まるスポットだ。バイクをモチーフにしたお守りやステッカーだけでなく、バイクで来られて、ご祈祷を受けた方には「お抹茶を出す」という贔屓なおもてなしが人気を博している。
「この取り組みを始めたきっかけは、近辺でバイク事故が多いことと、知り合いを事故で亡くしたことがきっかけだったんです」と宮司は教えてくれた。「気を引き締め、安全を祈るために寄ってもらいたくて、お守りを作りました。当時はバイクのお守りが手に入る神社は少なくて、話題になったんですよ」。宮司が安全を願う気持ちから始まった心意気は、広く伝わったようだ。
「最近ではアート活動を応援できたらとアーティストにお守りのデザインを頼んだり、ハンドメイド作家の販売会などを開いたりもしていますね」
宮司は、神社という「人が行き交う場」で新たなチャレンジと成功を生み出すことができないかと模索し続けているという。
さて、この神社にはおっぱい神社なる一風変わった愛称がある。正式な名前は乳神神社といい、宮司がその歴史を教えてくれた。「乳神神社の乳授姫大神(ちちさずけひめのおおかみ)は、瀬多来(せたらい)という地域に祀られていたのですが、過疎化に伴い、浦幌神社に。乳授姫大神は、母乳の出にくかった母親たちから親しまれてきた子宝や安産の神様です」。宮司は続ける。「実は乳神神社は炭焼き職人のクチコミで広まったんです。昔、浦幌町には多くの炭焼き職人が住んでいて、彼らが出稼ぎ先で広めたんだとか」。
しかし、そんな炭焼き職人たちが脈々と受け継いできた歴史ある浦幌木炭が、いま危機を迎えているという。
そして宮司から浦幌木炭が新しい経営者に引き継がれようとしている話を聞いた。なんと宮司の奥様でもある、女性経営者だそうだ。とても興味が湧いてきた。