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滞在記 2022.11.18 Update

【私が出会った浦幌町民(5)】木の歴史が残る町。地域で循環させる技術と資源〜浦幌木炭 背古まどかさん〜

生まれた場所や土地柄にしばられず、「この場所にずっといたい」と心から思えている人たちが、私はうらやましい。そんな人たちに対するうらやましいという思いは、実は多くの人たちが抱えているものなんじゃないだろうか。生まれ育った町や、住み慣れた町で自分がやりたいと思ったことができなかった、共感してくれる人がいなかった。そうやって夢を諦め、都会に向かった人もたくさんいると思う。そんな私は、「この場所にずっといたい」という思いを素直に表してくれた9人の町民たちに、ここ、浦幌町で出会った。

こんにちは、須藤か志こです。前回の記事では、浦幌神社の背古宮司に会いに行ったのだが、浦幌神社と深く関わる「炭焼き職人」の話になり、その浦幌の伝統の炭焼きの継承者がいなくなるかもしれないという危機に面しているという話を伺った。その危機に立ち向かったいるという背古まどかさんに会いに行くことにした。

浦幌神社から数分、浦幌の道の駅の目と鼻の先に木炭を焼く場所はあった。もっと山のほうにあると思ったら意外と市街地に近かった。

到着早々、人懐っこく足元に近寄るこの猫ちゃんは看板猫だそう。

この日も作業は進んでおり、円さんはちょうど技術継承をおこなっている頃だった。

山に囲まれた浦幌町では昔から林業が盛んで、ナラを原料とした木炭は大正時代から経済や文化を支えたという。しかし生活環境の変化から木炭の需要は低迷。その歴史や技術を受け継ぐ窯は姿を消し続け、遂に最後の窯の親方も引退を決意したそうだ。その中で浦幌木炭を受け継ごうと立ち上がったのが背古まどかさんだ。

「浦幌木炭は質がいいんですよ。長持ちだし爆ぜない。歴史的にも技術的にもとても価値が高いから、残していきたいです」と思いを語ってくれた。ちなみに浦幌木炭を使った炭焼き豚丼は最高らしい。今度、やってみたい。

まどかさんには、株式会社エムケイの社員という顔がある。

「森を大切に 木と共に生きる」を掲げ、60年以上にわたり浦幌町の森林と接点を持ってきた会社だ。そんなエムケイでは、主に牛の敷料となるおが粉を製造し、地域資源を地域産業で循環させる取り組みを行っている。浦幌町にある留真温泉は、エムケイのウッドチップを使ったチップボイラ—で温めているという。

「林地未利用材という、木を切り出したあと資材にできなかった木が森に残るんです。そうした木は活用することが難しいんですが、有効活用して森に還元したい、そんな思いで新しい事業にも取り組んでいるんですよ」。

森の価値をよく知っているからこその取り組み。そんなエムケイの生産工場の現場は、木の匂いでいっぱいだ。

「木質ペレットの原料を乾燥させるための燃料も、石油を使わず、林地未利用材を使っているんです。地球に優しい燃料を作るためのエネルギーも、環境に配慮したものを使いたいと思うから」。

町の森林の価値を受け継ぐだけではなく、その価値を地域に届け、生活へと繋げる。受け継いでいくことの困難さと尊さを誰よりも知っているまどかさんだからこそできる、地続きの取り組みを応援したくなった。浦幌には応援したくなる人がたくさんいる。

さて、今日はこれで5人の人に出会った。少し座ってゆっくりしたい気持ちが芽生えてきたので、市街地にある「喫茶店」に行くことにした。まさかまた浦幌にただいま、と言える場所ができるなんて今はまだ思っていない。次に向かったのは「喫茶カナリア」だ。

この記事を書いた人

この記事を書いた人須藤か志こ

須藤か志こ

釧路市生まれ釧路市育ち。「つつうらうら」では、「ハハハホステル」での滞在中に出会った多くの浦幌民から聞いた、彼らがここに住む理由や魅力をご紹介。

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