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滞在記 2022.12.20 Update

山を切り拓き、道を敷いていく。株式会社フクタの林道整備の現場を見学。

私たちが日頃使用しているものの一つに、道路がある。
道路は人々が日常生活をする上で欠かせない、ライフラインの一つに含まれるだろう。

浦幌町において、快適で安全な道路を整備するために力を発揮している会社がある。
1973年、福田順一氏が創立した株式会社フクタだ。
株式会社フクタは、浦幌町内をはじめとする十勝エリアにおいて、公共土木工事の受注や施工を行う。

現在は2代目社長の福田憲司さんが社長を務めており、総勢37名の従業員が働いている。
地域の第二次産業を担う会社として、日々浦幌町や十勝エリアのライフラインを支えている。
今回の取材では、はじめに2022年7月末から工事が始まった林道整備の現場を見学させていただいた。
林道整備は、私たちが日頃見かける国道の道路整備とは異なる様子の現場だ。

どのように山を切り拓いて道を敷いているのだろうか。さまざまな話を伺って学べることを楽しみにしつつ、現場へ向かった。

山を登り、現場へ。

当日の現場は浦幌町の「幾千世(いくちせ)」と呼ばれるエリアにあった。現場近くで福田社長と合流し、一緒に現場へ向かう。
道中、車は山道をどんどん進んでゆく。
私が浦幌町に来て、これほど標高が高い場所を訪れたのは初めてだ。気づけば、車は山頂と同じ高さの場所を走行していた。

山道を登ること、約10分で現場に到着。
周囲には多くの木が生い茂っている。なぜ、この場所で道を切り拓くのだろうか。
現場で執行役員工事部長を務める醜茶 敏美(しこちゃ としみ)さんに話を伺った。

「林道を整備する理由は、この道を林業会社が使うからです。私たちが道を敷いたあと、木の伐採や搬出の作業をするのだと思います。」

周囲の木々をよく見渡すと、一定の間隔を空けて立っていることがわかる。木々の生育を促すために、余分な材木を伐採した「間伐」後の状態なのだろう。

ここで気になることは、林道のルートをどのように決めているかということだ。
現場では見られない作業過程を、醜茶さんに伺った。

「林道のルートは、発注主である浦幌町やコンサルティング会社が決めています。整備ルートが指定された設計図のようなものが事前に提示されるので、当社ではその方針に基づいて作業をしています。」

掘削作業の様子

当日の作業は、舗装作業の初日であった。
道の先端では大きな重機が休む間も無く作業を続けている。
重機の先端にはツメがついており、その爪で地面を20cm掘削しているとのこと。
そして、掘削した地面に採石を詰め込むことで砂利道が完成する。

掘削も一筋縄ではいかない。現場の地質によっては岩のように硬い石から柔らかい土まで状況はさまざまだという。
だが、掘削を行う重機には最先端の技術が搭載されていると醜茶さんは教えてくれた。

「最新の重機には、GPSが組み込まれています。重機に図面の3Dデータを読み込ませることで、計画ラインよりも深く重機のツメが下がらないように自動制御できます。そのため、初心者のオペレーターでも正確な掘削が行うことができます。また、丁張り(建造物をつくる際に、基礎の高さの目印として木杭を取り付ける作業)も必要なくなりました。」

当日の現場では若手社員からベテラン社員までが一つのチームとなり、作業を進めていた。
その中でも、若手社員の活躍に目が留まる。
現場責任者は、23歳の若手技術者の相澤直希さん。当日は醜茶さんがサポートしつつ、現場責任者としての仕事をこなしていた。
現在、株式会社フクタには20代の社員が4名在職している。
彼を見つめる福田社長や醜茶さんの明るい表情から、1人の若手として期待されていることが伝わってきた。

「誰と働くか」で変化する仕事のモチベーション

当日現場で作業をしていた方に、株式会社フクタでの仕事内容や人間関係について話を伺うことが出来た。
名前は黒島秋人さん。浦幌町出身であり、若い頃も浦幌町の土木会社で勤めていたことから、浦幌町との関わりは深いという。
株式会社フクタには、2016年に技能者として入社。以後、道路整備の現場を担当している。

黒島さんが、林道整備の現場を担当するのは2度目だそう。
普段はどのような現場を担当しているのだろうか。本人に伺った。

「普段は国道や道道、町内の道路維持を行っています。やることは時期によって異なりますね。冬は除雪がメインで、春から夏は道路清掃や草刈りも行います。他には、のり面(人工的に作られた斜面)が崩れている場所を補修したり、木が折れて道路に被害が出ないよう事前に伐採などもしています。」

黒島さんたちが仕事を日々こなしているからこそ、私たちは日頃安心して道路を使えるのだと実感できる。
黒島さんはさまざまな場所で現場を担当しているが、そのチームワークはどの現場に行っても変わらないと明るい表情で話した。

「みんな仲がいいですね。働きやすい環境だなと思います。土建屋さんで勤めているとたまにクセのある人と出会うこともあるのですが、この会社では和気あいあいと現場をこなしている雰囲気があります。」

明るい環境で仕事ができているからこそ、頑張れることがあると黒島さんは迷いなく話した。

「いまは『代理人さん(現場責任者)のために現場をこなしたい』という気持ちがあります。そのためなら少し休みを削ったり、雨の中で作業することも苦にはならないですね。」

黒島さんの話を伺って、1つの気づきがあった。
働く中で大切なことは、「どこで働くか」ではなく「誰と働くか」ということだ。

株式会社フクタには、一緒に働いていて心地よいと感じる仲間がいる。
黒島さんだけではなく、一緒に話を聞いていた福田社長の笑顔から実感することができた。
浦幌の山中で、また一つ、いい会社と巡り合うことができた。

次回は福田社長に、現場で明るいチームワークとなった理由なども伺っていく。

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林道整備は、木々の伐採や造林が行われる大きな循環過程の中の一部に含まれています。
林道が完成したあとに行われる作業の一部を、北村林業株式会社に取材させていただきました。
併せてご覧ください。

「林業のシゴトを現場取材。山の過去と未来の間に「現在」という橋を架ける造林作業の様子に迫る。」

この記事を書いた人

この記事を書いた人新谷有希

新谷有希

人の話を聞いて、新たな学びを得ることが好き。いまのマイプロジェクトは「興味のあることを掛け合わせながら、道東・道北としなやかにつながる」こと。地域に根ざした取材ライターとしての活動は、どう続けられるのか。デンマークにある人生の学校「フォルケホイスコーレ」を日本でどう広げていくのか、色んな人たちと探究中。

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