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滞在記 2022.12.23 Update

【私が出会った浦幌町民(6)】また会いたくなっちゃう。浦幌町にお母さんができる喫茶店〜喫茶カナリア 須藤尚子さん〜

生まれた場所や土地柄にしばられず、「この場所にずっといたい」と心から思えている人たちが、私はうらやましい。そんな人たちに対するうらやましいという思いは、実は多くの人たちが抱えているものなんじゃないだろうか。生まれ育った町や、住み慣れた町で自分がやりたいと思ったことができなかった、共感してくれる人がいなかった。そうやって夢を諦め、都会に向かった人もたくさんいると思う。そんな私は、「この場所にずっといたい」という思いを素直に表してくれた9人の町民たちに、ここ、浦幌町で出会った。

いい街には「いい喫茶店」がある。カナリアは紛うことない「いい喫茶店」だ。カウンターではお母さんが優しく笑っている。これまで浦幌町の5人の方と会ってきたことを話すとお母さんも嬉しそうに聞いてくれるのだ。

「素敵なお店ですね」と話しかけると、お母さんは「いやあ……地元の人のおかげです」と照れながら謙遜した。「町の人みんなが楽しめるお店がいいねって始めたんだけど、ありがたいことに若い子から近所の大人の方までたくさん来てくれています」。

カナリアの内装はとても綺麗で照明も明るい。子どもから大人までが過ごせる居心地のいい空間を作り出している。喫茶店ながら、カナリアには「蕎麦」「ナポリタンスパカツ」などのメニューが並ぶ。

私がこの日頼んだのは「カフェオレスペイン風」。

甘めのカフェオレの上に、お母さんお手製のホイップクリームがちょこんとお行儀よく座っている、可愛らしいドリンクメニューだ。「甘くて美味しい! なんで『カフェオレスペイン風』なんですか?」と尋ねると、お母さんは少し考えてから「……なんでだろう?」とチャーミングに笑った。ずるい。ずるすぎる。そんなのずるいよ、お母さん! あまりの可愛さに悔しさを感じながらも、しっかり美味しい「カフェオレスペイン風」を味わった。「カナリアに行きな!」とみんなが勧めてくるのも大いに頷ける話だ。

ちょうど、かし和家の近江さんもカナリアに来ていた。

近江さんが店を出る際、お母さんが近江さんに話しかける。「一緒に頑張りましょうね」。その言葉には老舗も若手も関係なく、共に浦幌町を盛り上げていく仲間だという意識が溢れていた。「浦幌町では若い人の力もすごく期待されているから、これからが楽しみですよ」。そんな声をかけられるお母さんの懐の広さに、またカナリアに来たいと強く感じたのだった。

今日の行程はこれで終わったが、ハハハホステルに帰る道中、お母さんの言葉をあらためて振り返った。応援してくれる人がいるのはすごいことだ。応援したくなる人がいるということはその裏返しにしっかり応援してくれる人もいるということなのかもしれない。浦幌が好きになる理由はもしかしたらそこにあるのかもしれない。そんな思いにふけながら帰路についた。明日はバンバに会えるらしい。大きな馬だ。想像がつかないが楽しみだ。

この記事を書いた人

この記事を書いた人須藤か志こ

須藤か志こ

釧路市生まれ釧路市育ち。「つつうらうら」では、「ハハハホステル」での滞在中に出会った多くの浦幌民から聞いた、彼らがここに住む理由や魅力をご紹介。

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